男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 香水はあくまでも香水だ。
 私が香水作りのベースとしているアロマテラピーとは芳香療法の一貫であり、それは決して医療ではない。
 前世での古代文明、薬学療法や植物療法といったまだ医療が発達してない時代、自然がより身近だった時代で考えるのであれば、これは医療だった。

 けれど目に見えない心理的なところに作用して体に変化を与える療法は、私が死ぬ直前の前世、医学が進んだ世界では、医療とは呼べないものだった。
 だからこそ療法と呼び、医療と線引きされた呼び名がついているのだ。

 さらにこの世界に関していえば、医療だけでなく魔法も存在する。
 そして芳香療法が魔法かといわれると、全く違うと私は答えるつもりだ。
 だから、この香りをつけたからといって相手の気持ちを完全にコントロールなどできるはずがない。

 媚薬香水を依頼されてから私なりに調べたところ、人の感情をコントロールするような魔法はこの世界に存在しない。
 存在したとしても禁忌中の禁忌だ。
 私は自分の作った香水を、そんな風に扱って欲しいわけでも、魔法に取って代わって、人の気持ちをコントロールしたいわけでもない。

 ただ自然と流れるエネルギーから、心を落ち着かせたり、自然治癒力や自己治癒力といったものを改善して、医療ではできないケアを、魔法ほど大掛かりでお金もかけなくていい方法を、この香水が担ってくれたらいいと思っていた。

 それなのにレオンはあの香水を、魔法か何かの類だと思っていたのだろうか。