男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「何度も言いますが、あの日クレイマス令嬢といたのは偶然です。店の様子を興味津々に覗いていましたが、前夜のことがなければ声をかけることもしなかったでしょう」

 前夜のこと……クソキールのパーティのことね。

「そして今日はどうしてその香りをつけていないのか、という質問ですが……」

 そう、それだ。
 いくらハンカチに香水を振ったとはいえ、レオンがさっき言ったようにジャケットには香りがつくだろう。
 だけどその香りを今日は全く匂わない。目と鼻の先にまで距離を詰めても、全く感じなかったのだ。間違いなく今日はつけていない。

「香水の力を使ってあなたを落としたところで、それはリーチェの本当の気持ちではないということに気がついたのです。だから私は香水をつけることを止めました」

 ガシガシと頭を掻きむしり、そのまま顔を地面に向けている。
 普段はドーンと構えてる彼が見せる、ちょっとした仕草や行動に、私の胸はピクンと揺らいだ。

「言ったでしょう? 私はあなたの本音が知りたかった。そして、嘘や偽りや、香水の力などで左右されたような気持ちではなく、あなたの本当の気持ちが欲しかったのです」