男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「あの香水だって、本当は誰のために依頼されたのですか⁉︎」
「……言っただろう。あれは気になる相手が現れた時につけるつもりで、その相手はあなただったのだ」

 レオンの瞳と同じ、冷めた色を乗せたその言葉に相反して、私は着火する。

「でしたらなぜ、今日はつけていらっしゃらないのですか?」

 わざわざ私に会いに来てるのに、香水をつけてないのはなんで?
 私が眠っていたから?
 いつ目を覚ますかわからなかったから?

 だったら逆に……。

「先日お店で偶然出くわした際は、つけていらっしゃったのに?」

 会う予定がなかったのに、香水をつけていた理由なんて一つじゃない。だって、あの日会っていたのはマリーゴールドだから。

「あの日マリーゴールドと会ったというのも、本当は偶然なんかじゃななかったのでは?」
「いいや、偶然だ」
「どうやってその言葉を信じろと?」

 苛立ちから私の体は小刻みに揺れる。
 ううん、これは苛立ちから来るものではないのかもしれない。
 むしろ悲しみなのかもしれない。もしくは今までの悩み苦しんできた気持ちなのかもしれない。
 まるで火山だ。今まで私の中に留まっていた感情の全てが、全身から噴き上がってくるような感覚だった。