男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 やっと終わる。
 やっと、レオンが折れたのだ。
 これで私達はお互いの時間を、それぞれ過ごすことになる。
 それを寂しいと思う気持ちと同時に、小さな開放感が私の胸に広がり始めていたーーその時だった。

「……リーチェ。私はずっと、あなたの気持ちが知りたかった。運命だとか、未来が視えるだとか全てを抜きにして、シンプルなあなたの気持ちが」

 動揺で小刻みに震えていたレオンの瞳は、私だけを映し出していた。そこに映るのは私だけで、彼の瞳は固く揺るぐ事がない。
 そんなレオンの様子が、彼の言葉の慎重性を示しているようだった。

「最後です。これが本当に最後です。この先二度と聞き返すことも、同じ質問を投げる事もないでしょう……だから、嘘偽りなく、本音で答えて下さい」

 レオンは私の肩に手を乗せた。そこに熱がこもり、彼がグッとそこに力を込めた。

「あなたがもし、未来を視る力がなく、運命なんてものも知らないとしたらーー私の事を好きだと、私の気持ちに応えたいと思いましたか……?」

 鋭く射抜く言葉と、私の本心を覗き込もうとする青い瞳。そのどちらも私の心にゆさ振をかける。
 足元がグラつきそうになったけど、レオンが私の肩をガッチリと掴んでくれていたおかげで、しっかりと自分の足で踏ん張る事ができた。
 思わず涙が浮かんできそうになったけれど、ぎゅっと奥歯を噛み締めた。
 体が震えそうになった時は、拳を握り込み、爪が手のひらに食い込むくらい固く握って、なんとか耐え抜いた。
 そうやって私は、静かに答えた。

「……いいえ、思いません」