男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「私の事をあれほどまでに口説き落とそうとされていた侯爵様ですから、簡単に撤回するのは難しい事なのかもしれません」

 色恋沙汰や浮いた話など全くない冷徹漢な男。
 そんな男がモブキャラの私に恋をしたが故、マリーゴールドへの本物の愛に影を差している。
 私が次に解かないといけない糸は、ここだ。

「ヒヨコが生まれて初めて見た人物を親だと認識するように、侯爵様も普段から異性に好意を示す人間ではない分、そういう人を見つけてしまったが故に、私に固執をされていらっしゃるのでしょう? 本当はすでに別の方に心が傾いているというーー」

 言葉の途中だというのに、私は口をつぐんだ。
 いいや、つぐみたくてつぐんだわけじゃない。単純に続きが話せなかっただけ。
 だって私の口は、レオンの大きな手で覆われてしまったのだから。

「どうしてあなたは、そうやって達観し、どこか他人事の様に話すのですか? 私は今、あなたと私の話をしているのです。そして私は今、あなたを好きだと言っているのですよ!」

 鬼気迫る勢いで、レオンは私を睨みつける。口を塞がれてるせいで、私は言い返したくても何も言えない。