男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「自覚がなかったのですね。あなたがマリー様と初めて会った時、恋をした顔をしていました」

 恋に落ちた時の人の顔を、私は一番よく知っている。その表情は私が魂込めて描いたものだ。命を削るようにして注ぎ込んだ、表情だ。
 そしてそれはレオンだけじゃない。レオンの表情に呼応するように、マリーゴールドも同じような表情を見せていた。
 私が設定した通りに。そして、私が描いた通りに。

「私は言いましたよね? 六ヶ月。もし侯爵様の気持ちが変わらなければ、侯爵様の勝ち。けれどその期間中に侯爵様の気持ちが誰かに移れば、私の勝ちだと」

 当たり前のように賭けに勝つことしか想像できなかったけれど、正直、レオンが賭けに勝ってくれたらどんなに良いかと思っていた。
 レオンが勝つなんてこと、万に一つもなくて、想像すらできなかったくせに。

「賭けの期間を設けはしましたが、あくまで目安でした。侯爵様が運命の相手と出会った地点で、いつでも賭けを終わらせることはできるんです」

 だから……。

「終わりにしましょう侯爵様。賭けは私の勝ちです」