男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「か、顔の良い男性と一緒にいると、鼻血が出るんです。ご存知ですよね? だからこの手を離してください」
「出しても構いません。顔を隠されるよりもマシです」
「私が嫌なのです。なのでこうしてその絵を見て、鼻血を出さないように訓練していたのですよ」

 タネ明かしをする自分がなんとも滑稽に思えてならないけど、ここは素直に言ったほうが誤解がなくていい。
 そう思って絵を描いた理由を言ったのに、レオンはやっぱり納得していない様子だ。

「なおさら、私と一緒にいた方がいいとは思わないのですか? こんな風に絵を見つめるよりももっと効率的で、合理的です」

 いや、効果が絶大すぎて私には不合理的です。

「……それともなんですか。リーチェは他の男性に近づくために、私の絵で慣らしておこうとしていらっしゃったのですか?」

 突然引き上がった目尻を向けられ、さすがの私も理不尽と思わざる負えない。
 いくら推しの言葉だとしても、私の努力をあらぬ方向にねじ伏せられるのだけは、受け入れられない。

「なぜそのような発想に至るのかが分かりません」
「ではリーチェ、あなたが私のことをどう思っているのか、教えてくださいませんか?」

 両手を掴まれ、至近距離。麗しい顔が間近にある。
 その顔に凄まれていたとしても、私の心臓はどうしたってバクバクと脈を早めてしまう。