男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「香水のことにも詳しいですし、リーチェは本当に多彩ですね」

 レオンがいくら褒めようが、持ち上げようが、私は無視を決め込む。目すら開きません。
 残念ですがレオン、私はもう死んでいる。
 大人しく永遠(とわ)に眠りますので、お静かにお引き取りください。
 その際はどうか、その絵は置いていってください。
 もしくは私のこの身と共に、火に焚べてください。
 この世界で火葬は一般的でないのなら、暖炉の火に焚べるなり、それで焼き芋を焼くなりしてください。

 黒歴史がこの世に残っていては、死ぬに死にきれないので。
 ……いや、それでも死にますけど。
 しかしこの世界で唯一(私にとっては)絢爛豪華な顔を持つこの男は、私の頬を許可もなく撫で回している。

「リーチェ、あなたはこれほどの数の肖像画を描くほど、私のことを好きでいてくださったのですね」
「それは誤解ですっ!」

 思わず蘇ってしまった。
 ガバッと状態を起こし、レオンの手からさっきの紙を取り上げようとしたけれど、思った以上近くにあった彼の顔と危うくぶつかるところだった。
 昭和臭を漂わせる設定。
 ヒーローとぶつかってキス、なんていうフラグを起こすところだった。
 危ない危ない。それは本気で死に直行する。
 致死量の血を噴き出して。