男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「思い出したようですね」

 レオンは切れ長な瞳の角を柔らかくしならせて、微笑んだ。それはドキリと心臓が高鳴る笑みだった。
 そうでした。あれだけ死んでからあいつの恨みつらみが出てきたくらいの出来事なのに、よくもまぁ忘れてたものだ。
 いや、正確には死んでなかったようだから、死の淵にいたというのが正しいのかもしれないけど。
 そう思って私は自分の体に目を向ける。

「あれ? 怪我、してない?」

 キールに背中から刺されたはずなのに、刺された痛みがない。空いた片手で背中に手を伸ばすが……届かない。リーチェってば、体めちゃくちゃ硬いじゃん。
 そんな私の様子を見ていたレオンは、フッと声を漏らして笑った。
 声を出して笑うレオンは貴重なため、思わず手を止めてレオンを魅入っていると……。

「ああああああああっ!」

 私は慌ててベッドから抜け出そうとして、レオンに止められてしまう。

「どこへ行くつもりですか? まだ安静にしていてください」
「お願いですから行かせてくださいっ! というかどこも怪我をしていないのですから、行かせてくださいっ‼︎」

 後生だから行かせてくれ! お願いだから!
 私をベッドに縛りつけようとしてくるレオンのはるか後方、そこの壁に貼られたものを見て、一瞬意識が遠のきそうになった。