男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「……ーチェ」

 姿を見なければ、気持ちは落ち着くだろうと。
 言葉を交わさなければ、いつかは忘れ去ってしまうだろうと。
 もう会えることはないだろうけど、来世レオンにまた、会いたいなんて思わない。
 もう一度『青愛』の世界に生きたいとは思わない。
 だからこの声の主がたとえ、レオンだったとしても私はその手を掴みたいなんて思わない。

 相手を引き離せないのであれば、嫌われればいい。
 相手を嫌いになれないのであれば、関わらなければいい。
 頭でそう思っていても、実際に行動を起こすのは簡単なことじゃない。

「……リーチェ」

 靄のかかったようなものが、どんどん形になって、色付いていく感覚。
 優しく私の名を呼ぶのは、あの人しかいない。
 その人物を思い返すだけで、私の心臓が、脳が、彼を探そうと動き出す。

 ……ああ、そうでした。私はキールにも負けないくらい、馬鹿なんでした。
 だからーー。

「レオンー!」

 どこから聞こえるのか、どこに向かえばいいのか分からない中で、私は手を伸ばして、叫ぶ。
 死んでしまったんだから、潔くここに留まっていればいいのに。今さらあがこうが、私にできることなんて何もないのに。
 そう思うのに。