男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 あんの、クズ男……自分の描いた漫画のキャラは我が子のようだとよく漫画家仲間は言っていたけれど、あいつは違う。
 あいつは他人だ。
 他人どころか敵。
 いいや、この創造主でもある私の敵であるのであれば、やつは神を冒涜する世界の敵である。

 こちとら前世じゃ、そこそこのもやし生活をしてたんだぞ!
 痛みにだってめっぽう弱いんだぞ!
 日中夜関係なく机にかじりついて漫画描いてたんだ!
 机の角で足打っただけでも涙流すくらい痛みに弱いっていうのに、あのゲス野郎は過去含め何度も私を殴って……って、思い出しただけでもはらわたが煮え繰り返る! 

 もっと唾かけてやればよかった!
 いいや、あいつのケツの穴から指突っ込んで、奥歯ガタガタいわせてやればよかった!
 そんなのどうやったらできるのか分かんないけど!
 想像しただけで汚すぎて、本当にできる気なんてしないけど!

 …………でも、ま。
 これで今世では少し、徳を積めたのではないだろうか。なにせ男主人公を庇って、怪我をして、そして死んだんだから。
 前世のように吐き散らかして頭打って死んだのとは大違いなんだから。

 どうせ死なないといけなかったのなら、どれだけ来世に向けて徳を積んだ死に方ができるかが重要だった。
 何せ私には徳がない。むしろ多分、マイナスだ。
 だから今世はモブ令嬢で、奥歯ギリギリさせながら好きな人の恋を後押ししなくちゃいけなかったんだ。