男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 床に伏せっていたはずのフードの男が立ち上がり、腰に刺していた剣を抜いてレオンに切りかかる。
 完全に意表をつかれたレオンは、脇が隙だらけだ。
 キールが勝ち誇ったように笑みを浮かべる。私は慌てて立ち上がり、レオンの元へと駆け出すが間に合わない。

「レオン様!」

 レオンは間一髪のところで身を捻り、致命傷を避ける。その体を捻った状態からフードの男に切り掛かり、首をはねた。
 切り付けられたレオンの横腹から血が滲んでいる。すると今度はもう一人の男がレオンの背後から切り掛かった。
 さっきレオンに切られて身動き一つしなかったはずなのに、なんで急に……? そんな私の疑問に答えをくれたのは、レオンだった。

「アンデッドか」

 そう言って二人目の男の首をはねた、と同時だった。

「さすがは帝国の騎士。よく知ってるじゃないか」

 キールは懐に隠していたナイフを取り出し、痛手を負ったレオンの背後から心臓目掛けて飛びかかった。
 けれどーー。

「ぐぅっ……!」

 レオンはアンデッドの二人に気を取られていたが、私はことの一部始終を捉えていた。
 キールが立ち上がる瞬間と、ナイフを取り出す瞬間。
 さっきまで痛みに歪んでいた表情を見せていたが、どうやらあれは演技だったのだろう。
 そう思わせるほど素早い動きを見せたキール。
 そして私はそれを見た瞬間、レオンに向かって身を投げるようにしてキールとレオンの間に飛び込んだ。

「リーチェッ!」

 そうして私は、レオンを庇うようにして、キールのナイフをこの身に受けた。