男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

踏みつけるレオンの足の方が、その足から抜け出そうとするキールの力よりも強い。

「……どうやって、ここがわかった?」

 苦しそうに息を吐くキールに、レオンはニヤリと笑みを浮かべた。
 普段は能面で表情という表情を表に出さないレオンが、ゾクリと背筋が凍えるほど冷たい笑みを見せている。

「嫌な予感がしていた。お前のようなクズが黙って退くとは思えなかったからな。それに、お前がリーチェの決闘の返事を保留にした地点で、お前が俺と剣を交える気がないことはわかっていた。決闘をしなくて済むような方法を考えるだろうとも、安易に予測はつくとは思わないか?」

 それは私も思っていたけれど。
 でもまさか、いくらクズなキールでも、こんな手を使うなんて思っても見なかった。それが私の敗因だ。

「だからさっき、念には念を入れて、リーチェのドレスに追跡の香りをつけておいて正解だった」

 追跡の香り?
 初めて聞く単語に、私はレオンの顔をマジマジと見つめた後、汚れきったドレスに視線を落とした。
 埃や砂、そして血がついたドレスからは、それら以外の香りはしない。一体追跡の香りとはなんなのだろうか。レオンはそれを、いつふりかけたのだろうか。