男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 ーードガァンッ! と音を立てて、キールは壁にぶち当たる。ぶち当たった壁は木造だ。キールの背後からハラハラと木片が落ちて、彼の顔に降りかかる。

「クソッ、バービリオンンンン……ッ!」

 キールは怒りながらも手と後頭部の痛みに悶えながら、転げ回っている。
 そんな彼に見向きもせず、レオンは私を抱き起こす。

「……リーチェ、遅くなってすみませんでした」

 心から心配し、悔いている表情を見せるこの男の優しい声色に、思わず私の瞳はもう一筋の涙をこぼす。
 拭うことすらできないでいる私を抱き締め、レオンは手に握り締めていた剣で私の手を縛り上げていたロープを切った。
 そして剣を置き、もう一度ぎゅっと私を抱きしめた後、流れた涙の跡を拭ってくれている。

「もう少しだけ待っていてください。すぐに終わらせますから」

 眉尻を落とし、着ていた上着を私の肩にかけた後、再び剣を握った。
 痛みに悶え、転げていたキールに向かって歩き出したレオン。そしてそんなキールの腹を踏みつける。

「バービリオン! 貴様ッ! この俺にこんなことをしてタダで……ギャアアッ!」

 レオンはキールの肩を剣で突き刺した。キールの瞳と同じ赤い血が、そこからドクドクと流れ出す。

「お前こそ、こんなことをしてタダで済むとでも思ったのか?」

 レオンはキールの肩から剣を抜き、そこを踏みつける。キールはその痛みに再び悲鳴をあげ、身をよじる。けれどもレオンはキールを逃さない。