男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 これだけプライドの高い男が最後に私を抱こうとするのは、私を従え、亡き者にしたいからでしょうね。
 その上で、後日発見された私の死の原因については、山賊にでも強姦されて殺されたのだというふうに見せる。
 そしてそんな無残な私の死を知ったレオンの心に、このクズ男は傷を付けたいのだろう。

 キールはまだレオンが私を好いていると思っている。あのパーティでレオンが私をエスコートしていたのだから。
 今はもう気持ちが離れているけれど、それをまだこの男は知らない。
 けれど何が残念って、全ての状況がキールの思惑通りになってしまうということだ。
 だってレオンは間違いなく、私が死んだことを知れば後悔する。

 なぜあの日、私をちゃんと家まで送り届けなかったのかと。
 例えもう私に恋心を抱いていないとしても、彼は私のパートナーとして全うできなかったことを今後の人生でも苦悩することになる。
 彼はそういう人だから。

「暴れるなよ? 少しでも変な気を起こせば、すぐに殺してやるからな」

 そう言って、レオンはフードの男からナイフを受け取り、私の足を縛っているロープを切った。
 自分から選択肢を与えておいて、その返事を聞かないなんて。本当にこの男には幻滅しかない。
 黙って見つめればキスをせがんでいる。避けているのは俺の気を引くため。
 お花畑でミジンコ以下の小さな脳みそを下半身に持つこの男は、返事がないのはイエスの証拠だと思っているに違いない。