男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 物語通り自殺をしないですむようにキールを避けてみても、あいつは私を追ってきた。
 それでもキールを好きにはならなかったけど、代わりに不毛にも男主人公のレオンを好きになってしまった。
 レオンは私のことを好いているようなことを言っていたが、結局はマリーゴールドと出会い、二人は惹かれ合っている。

 運命は少しずつ変わってきた。けれど、根底のところは変わっていない。
 レオンとマリーゴールドが惹かれ合ったように。
 そしてーー。

「やっと自分の立場を理解したようだな」

 そう言ってフードを被った男の背後から現れたのは、私が一番顔を付き合わせなくない相手。
 ……キール・ロッジ・コーデリア。

「おい、口をきけるようにしてやれ」

 キールの言葉を受けて、私のそばにいる男が口元の布も外す。

「なんだ、普段の威勢はどうした?」

 はははっと笑うキール。美麗な彼の顔も、今となっては醜く見える。

「さすがのお前も、この状況に恐れをなしたのか?」

 恐れをなしたのか……ですって? よくもそんな言葉をこの状況でいえたものね。
 女性を拉致し、小汚い場所に連れて行き、自由を奪った上に、男二人に刃物をチラつかされて、恐るなという方が無理な話だというのに。