男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 私は、私を乗せた馬車が襲撃された事実を思い出した。
 相変わらずワケのわからない状況を把握したと同時に、ゾワリとした恐怖が私の体の芯を縮み上がらせる。
 瞳孔は恐怖で縮み上がり、体も同じように小刻みに震える。
 情けないとは思うけど、怖いものは仕方がないし、自分の意思では止められない。

 私は、どうなるの? こいつらは一体、なにが目的なの?
 族? それにしては身なりが変だ。それに私がつけているネックレスやピアスはそのままある。ということは金銭目的ではない……?
 もしくは身代金目的の誘拐? だから身に付けてるものには興味を示さない、とか……?

 私はどうなるのだろう。どうやってここから逃げたらいいのだろう。
 そもそも逃げ出せれるのだろうか。こんなふうに手足を縛られ、何の力も持たない令嬢ごときに何ができるのだろう。
 男の一人がきらりと光るナイフをちらつかせる。ローブの下、腰には剣が下げられているのも確認できた。


 ああやっぱり、私はーー死ぬの?