男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「起きたか」

 そう言った男の声。背中の皮膚がゾワリと粟立つ。

「おい、目隠しを外せ」

 目隠しを外された先も、薄暗い。けれど目隠しされていたせいで私の目はその薄暗い部屋にもすぐに慣れ始める。
 最初に目に飛び込んできたのは、薄汚い小屋のような場所。そして私のすぐそばに屈んで、顔を覗き込んでいる男。
 その次に、私の目隠しを取ったのであろう別の男。二人とも黒いフードを深く被っている。
 私の恐怖心を煽るかのように、男達の口元がニタリと笑みを浮かべた。

 この男達には見覚えがある。
 私を乗せた馬車が大きな音を立てて揺れる直前に見た、影。その影はこの男達だった。
 馬車を運転していた従者のもがき苦しむような声が耳に届いた直後、この男達が馬車の中に侵入してきて、私が悲鳴を上げたと同時に、布で口を覆われた。
 突然の出来事に驚きながら恐怖に震えていた私は、重くのしかかってくるような瞼に抗えず、そのまま意識を失った。