男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 錬金術って、すごい。
 魔法を使わずにアロマオイルを抽出しようとしたら、信じられないほど時間と、場所と、それに合わせた機械も必要になるというのに、こんなに一瞬で、あっさりと抽出できてしまうんだから、やっぱり錬金術師を雇ってよかった。
 私は抽出された精油の入った瓶を一つ手に取る。

「思ったよりも量が多いのね?」

 精油はいわば草木や花の濃縮だ。
 濃縮している分、原材料を多く必要とするのが普通なのに、男性が両手で抱えれる量なんて本来であればしれている。
 それなのに10mlの量が入る遮光瓶の中には、精油が3分の1の量も抽出できていた。

「そりゃ人間の手で一つ一つ抽出していくよりかは量取れるっすよ。なんせ原材料の全てを圧縮して取ったんっすからね」
「なるほど。じゃあ効率も良い上に自然環境にも適してるっていうわけね」

 大きく見ればコストカットにもなって、良いことだらけね。

「それじゃ、ここからが私の腕の見せ所ってところかしら?」

 私はドレスの袖をまくり上げ、あたりを見渡す。

「私がここで作業する時は、どこを使えば良いのかしら?」
「ああ、リーチェさんのものだったら、この棚に置いてあるっす。他に必要なものはこの陣使って呼び出すので、教えてください」

 オットーはさっきとは違う陣が描かれた紙を手に取った。
 本当に魔法は便利だ。不要に物をここに置いておかなくても良いんだもんね。