男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 ※アロマオイルは用法容量を守り、絶対に人様の目に向けてかけてはいけません。
 ※良い子の皆様は、どうか絶っ対にマネしないで下さい!

 ……前世でこのシーンを漫画に描き起こしていたなら、私は絶対こういった文言をコマ割りの隅に入れただろう。
 そんな風に思いながらも、私は戸惑うマリーゴールドの手を引きながら走る、走る、走る。

「あのっ、コーデリア公爵様はご令嬢の婚約者様なのでは?」
「あの男とは書面上のみの関係です! 私は彼を婚約者とは認めたくもありません!」
「そう、なのですね……?」
「そうなのですっ!」

 誤解されてるだけでも虫唾が走るなんて、どれだけ不快な男なんだアイツは。

「とにかく今は逃げましょう!」

 と言っても広い敷地、どこが出口なのか分からない。マリーゴールドなら正面玄関の方角を知ってるかな? そう思って振り返ると……。

「おい、逃がすか!」

 目をウサギのように真っ赤にさせながら走ってくるキールの姿が目に入った。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 思わず叫んでしまったと同時に、私の体はツンと後ろに引っ張られた。

「きゃっ!」

 今度の声は私じゃない。私に手を引かれながら、後ろを走っていたマリーゴールドの声だった。