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 お湯が沸き始めてから十分ほどして、愛理香が予め切っていたらしい具材を鍋へと入れた。


「ちょっと待ってね」


 彼女がそう言い、笑顔を見せる。


 ボクも思わず笑顔になった。


 ボクたちはゆっくりと待ち続ける。


 そう、入れた具がグツグツという音を立てて煮えてしまうのを……。


 そして愛理香は時折立ち上がって、上からみりんと醤油を注ぎ足しながら、お玉でゆっくりと掻き混ぜる。


 具は煮え続けた。


 四月だというのに外はすっかり真夏日で、暖気が辺りに絶えず滞留している。


 ボクも愛理香も二人でリビングにいて、肉じゃがが出来上がるのをじっと待つ。


 彼女は仕上げと思ったのだろう、ゆっくりと立ち上がり、上から更に醤油を垂らして、みりんで味付けしたようだ。