さて。
朝のホームルームで軽く私たちの紹介をされたあと、先生が諸連絡している間。
ガラッ、と遠慮なく教室の扉が開いた。
「はよっす」
「おー、西園寺か」
遅刻しているというのに先生はまったく気にしていない。
西園寺と呼ばれた彼の前に朝のホームルーム直前に来たヤンキーがいたけど、そっちはちゃんと注意していた。
もしかして、フィグセルアカデミーは優遇や暗黙の身分なるものがあるのだろうか。
西園寺と呼ばれたのは、染められた紺色の髪に鋭い目つきの褐色の瞳の、背の高い、ブレザーの下にパーカーを着た男の人だった。
この人…見たことがあるっていうか、あれは…。
「ね、レイくん」
「ん?」
「あの人って、暴走族の総長さんだよね?」
「よく知ってるな。そう。《蒼穹》っていう暴走族の総長だよ」
やっぱり。
西園寺って呼ばれてたし、そうかなとは思った。
彼は西園寺 嵐。
とても強い暴走族《蒼穹》の総長だ。
「………」
そんな西園寺くんは、私たちを軽く一瞥してから荒々しく自席に腰掛けると、そのまま足と腕を組んで目を閉じた。
……眠いのかな?
たぶん、この人がやべぇやつ3人目だろう。
あとは4人目、だけど、それは…。
「はあ……」
さっき遅刻してきた西園寺くんを見て軽くため息をついた美人さん。
黒髪ボブで背筋をぴんっと伸ばしている、私の前の席の人。
この人は、教室に来る前に理事長室に挨拶しに行ったときに理事長室で鉢合わせた。
そのときに理事長が軽く紹介してくれたのだ。
資料の提出で理事長室に来ていたらしいその人は、生徒会副会長の深山 雪乃。
来都くんと同じようにまったく隙がない人。
ただ、私たちにはこれっぽっちも興味がないようで、資料の提出のあとは、私たちと目線を合わせずにさっさと出て行ってしまっていた。
これで4人。
まあなかなか個性派揃いのクラスに交換入学してきたものだ。
そして、このクラスにいた名も知らぬ2人が、私たちと入れ替わりで私たちのクラスに交換入学している。
私たちはいいとして、その2人のことがちょっと心配だ。
下手に暴れて物を壊していたりしていませんように、なんて、顔も名前も知らない人なのにお世話係のような願いをしてしまう。
まあ、それがあってもいいように、やっぱりフィグセルアカデミーに転校し直すと言い張った葵たちを説得して嶺川学園に留めておいたのだ。3人が何とかしてくれると信じよう。
……そう、交換入学の直前は大変だった。
『のんちゃんに会いに来たのに、早速会えなくなるなんて!私たちもフィグセルアカデミー行く!』
『大丈夫だカノン!心配しなくても、オレの親は権力者だからな!』
『果音、すぐ会いに行くから。俺を待っていてね』
『そうやってすぐ権力使って転校しようとしないで。葵は別世界に走らない。』
呆れながら、私は陽向っちと慎吾くんの方向をちらりと見ながら、少し声を落として続けた。
『3人には、みんなを守って欲しい』
『……守る?』
『交換入学なんだから、当然このクラスにも来るでしょ、交換入学生。』
『そうだね?』
『その2人が嶺川の人や物を傷つけないとも限らないから。万が一何かあったときに対応できるのは、葵たちしかいないの』
なにしろ、久雪街の仕組みに沿って裏と表を分けたのが嶺川学園とフィグセルアカデミーなのだ。
今までの嶺川には、レイくんと私以外に裏社会に対抗できる人がいなかった。
『だからお願い。会うのは、遊ぶときでもいいでしょ?』
―――とまあ、そんなこんなで。
その後30分ほどかかりながら、私たちは彼らを説得したのだった。



