ある日、転校生がやってきた。 2nd days











フィグセルアカデミーの2年1組。



その教室は、どこか異質な雰囲気を持つクラス。



レイくんいわく、「やべぇやつ」が4人ほどいるそうで。



詳しくはまあ、見ればわかる。……だそうだ。



入ってみると、さて、一斉に視線を感じた。



フィグセルアカデミーの制服の中、2人だけイレギュラーが入る様はなんとも不思議。



私たちを見てこそこそ話したくなるのもわからんでもない。



だから、私はいいんだけど。




「……チッ」




レイくん、舌打ちした……。



そう、今レイくんはとってもご機嫌ななめ。



フィグセルアカデミーに来たからか、視線がうるさいのか、それともまた別の何かか。



わからないけど、とりあえずその無駄に漏れている殺気はどうにかしてほしいものだ。




「あ、あの……」




そのとき。




「澪くん、だよね?短い間だけどまた会えて嬉しいな。ほら、私、中学のとき3年間クラス一緒だった……」




むむっ、と。



私は思わず僅かに顔を強ばらせた。



レイくんの殺気すら気にせずに話しかけてきたのは、黒髪の清楚な見た目をした女の人。



中学のとき3年間クラス一緒だった、か。



なるほど。妬けるな。




「覚えてない」



「えっ」



「え?」




レイくんの冷たい一言に、その女の人だけでなく私もびっくりしてしまった。




「てか邪魔。話しかけんな」




う、うわ……。レイくんブリザード……。



ちらりと女の人を見ると、流石に狼狽えている。



うん。まあそうなるだろう。




「あっ、じゃあ、今から覚えてもらえれば……」




邪魔、まで言われたのにまだ引き下がらないのか。



流石フィグセルアカデミーの生徒。肝っ玉がすごい。



と、根拠も特にないまま感嘆してしまう。



私だったら時を改めちゃうもん。



嫉妬は変わらないけど、それはさておき少し同情してしまう。




「私、美篠(みしの) アリサ。よろしく」



「……」




はあ、とため息をついたレイくんがアリサちゃんの横を素通りして席に向かっていく。



どうやら取り合うつもりはないらしい。




「あ……」




アリサちゃんはどこか残念そうに見える。



だが、すぐに頭を振ってから私を見た。




「えっと、その。」




気まずそうにするアリサちゃんに、とりあえず私はにっこり笑いかけて手を差し出した。




「私、結野 果音。よろしくね、アリサちゃん」




すると、アリサちゃんはあからさまにホッとしたような面持ちで頷き、手を取るのだった。




「よろしく、果音ちゃん」




それからレイくんに続き、レイくんの隣の席に腰を下ろすと、今度は別の人が近づいてきた。



うーん、なるほど。



だいたいわかってきた。



覚えてないってレイくんは言ってたけど、やっぱりレイくんはアリサちゃんを覚えていたに違いない。



そして、アリサちゃんと今来た人がきっと「やべぇやつ」なのだ。



アリサちゃんだって姿勢に隙がなかったし、今近づいてきたこの人だって……。




「やっほ~、三ツ瀬 澪。久しぶりだね~」



「……」




「無視~?酷いところも相変わらずだな~」



……雰囲気が、常人のそれとは格が違う。



やって来たのは、金髪に猫毛の背の高い男の人。



へらりと笑顔を浮かべているものの、間延びした語尾からも笑顔からも、まったく感情を読み取れない。



むしろ不気味さを醸し出しているほどで、なんだか不思議な気持ちになる。




「……来都(らいと)



「あ、オレは覚えててくれたんだ~?嬉しいな~」




とりあえず、そんなに嬉しそうじゃないのはわかったけれど。



とにかく謎すぎる人だ。



レイくんに本当にちょっかいをかけているようにしか見えないんだよね。



アリサちゃんみたいなあからさまなアピールとか、周りの人みたいな怯えとか、そういうの全然ない。



目的はないっていうのが主張ってくらいだ。



でも、何か思惑というか、背景のようなものは感じる。




「……あ、きみがもう1人の交換入学生かな~?」



「え?あ、はい。そうです!」




にっこりと笑顔を向けられて、私は慌てて返した。



まさか自分に視線が向けられるとは。



来都、と呼ばれた人は一瞬私を値踏みするような視線で見てから、もう一度笑った。




「オレは神崎 来都。よろしくね~?」



「……結野 果音です。よろしく」




やっぱり、不気味だ。



間違いなくこの人が「やべぇやつ」の2人目だろう。



なんていうか、うーん……。雰囲気が特にそうなんだよね。



とりあえず私も無難な笑みを返してから、差し出された手を取った。