ある日、転校生がやってきた。 2nd days








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次の月曜日の放課後。

私とレイくんは、嵐くんに言われて、暴走族《蒼穹》のアジトにやってきた。

歓楽街からちょっと離れた駅に近いビル群の中にそれはあって、よくある「倉庫」というよりはヤクザの建物に近いかもしれない。


「総長!お疲れっす!」


私たちを連れて入ってきた嵐くんに、仲間らしき1人が声をかけた。

キラキラとした目で嵐くんを見ている。

学校では嵐くん大好き派と西園寺くん怖い派に分かれているけど、ここでは嵐くんはみんなに慕われているようだ。

というか、学校の嵐くん大好き派がそもそも、《蒼穹》の人たちなんだろう。


そのままエレベーターで8階まで上がる。

そうして案内されたのは、嵐くんの自室らしかった。

アジトの中に用意されてる休憩スペース、というよりは、ベッドもタンスもあるし生活スペースに見える。

…もしかして、ここで暮らしてる?


『総長、名字がすっごく嫌いなんですよ』

「……………」

「そこらへんに適当に座ってくれ」


嵐くんは机の横に通学バッグを置くと、小さな冷蔵庫からグラスとお茶を取ってついでくれた。

なんかマメだな…意外。無造作に放っておくイメージだった。

言葉に従ってちゃぶ台の近くに座ると、目の前にお茶を置いてくれた。


「で?」


レイくんは、早速切り出した。


「わざわざ誰も聞かないような場所まで連れてきて、どうした?」

「………」


レイくんの目は、冷たくない。

声音だって、嵐くんに問いかけているのは形だけで、本当は何を話そうとしているかわかったふうだった。

でも私はわからない。

何の話をするつもりなんだろう…?


「…来都が」

「来都くん?」


出てきたのは、意外な名前だった。

来都くんが、どうかしたのだろうか。


「2人には話してもいいんじゃないかって、言ってきた。俺のことを、俺の悩んでいることを、話すべきだと」

「え」


ふと、この前の会話が蘇った。


『多分だけど、2人なら嵐くんの話を聞いてあげられると思う』


…来都くんは、私に嵐くんの話を聞いてあげて欲しいと言った。

嵐くんにも言ってたんだ…。

でも、何で?

あの人は嵐くんの何を知ってるんだろう。


「あいつは不思議な男だ」


同じことを考えていたのか、嵐くんが呟くように言った。


「何を考えてるかわかんねえし、俺の何を知ってるかもわかんねえし、わかんねえことだらけだ」

「…うん」

「だけど俺たちに害意がないことだけは伝えてくる。それしか伝えることがねえのかもしんねえけど」


害意がない、か。

私が最初フィグセルアカデミーに来たときにもそれは感じた。

「オレは何も企んでないよ〜」って言ってきそうなくらい、「害意が感じられない」。


「だからとにかく、話してみようと思った」

「…そか。じゃあ、聞かせて」


ちょうど最近考えていた事柄だ。

嵐くんから話そうと決めてくれたのなら何より。

私は嵐くんに向き直った。

それから嵐くんは、まず頭を掻いて、悩むように部屋の角を見つめ、天を仰ぎ、うーむと唸る。

話すか葛藤しているのだろう。


「あー…重い話になるが、いいか?」

「もちろん」


嵐くんはさんきゅ、と言ってから一つ、重たいため息をついた。


「………最近会ったやつに話すのも変かも知れねえけどさ、三ツ瀬がいいやつなのも知ってるし、俺は俺なりに、結野のことを話してもいいって判断して話すから」

「ありがとう」


そう前置きを置いて、嵐くんは覚悟を決めたように、は、と短く息を吸って切り出した。


「俺は5年前、母さんを殺したんだ」