ある日、転校生がやってきた。 2nd days













……ん?

とりあえず宛もなくブラブラと歩いていると、こっちに向かってくる気配を感じた。

今いるのは旧校舎だ。

私は今ここにいるけど、それこそ私くらいしか来ない、人気のない場所のはず。

……誰だろう?

疑問に思って、人が来るであろう方向を見つめる。


「あ~、ここにいたんだ~」

「…………」


声が聞こえた。

独特の話し方とそれに見合わない威圧感、忘れるはずがない。

クラスの「ヤベぇやつ」のうちの1人、神崎 来都くんだ。

私にはあんまり興味無さそうだったのに、どうしたんだろう?


「澪とのイチャイチャはもういいの~?」

「えっ」


あ、それ?

もっとこう、お前何者やねんとか聞いてくるかと思ったけど、違うんだ。

来都くんなら、私が身体面で強いことくらいわかってそうだけど。テレビに出たし。

それとも、私が「何者か」なんてとっくに知ってるとか?

……なんか頭こんがらがってきた。考えるのやめよう。


「い、いいのいいの。来都くんはどうしてここに?」

「果音ちゃんと話がしたくて~」


来都くんは微笑んでから私を見つめた。

その仕草はレイくんを思い起こさせるが、レイくんとは決定的に違うところがある。

目に、光がない。

アニメみたいに目の色とか透明感とか、そういうのがわかるわけじゃないけど。

でもお世辞にも輝いているとは言えない、死んだ目だ。

警戒する私を知ってか知らずか、来都くんはそのまま話し始める。


「嵐のとこの暴走族にいる子を助けたんだって?」

「まあ、そうだけど……」

「嵐はね、ああ見えてすっごく律儀なんだ~」


律儀。

そうだろう。わざわざお礼を言いに来たくらいだ。

来都くんはそれも見ていたはずだけど、何を言いたいのだろうか?


「嵐くんは律儀で、不器用で、優しくて――やけに自己評価が低い」

「え?」

「なんでだろうね?あと家族の話はしたがらないんだ。それ以外のことなら、話しかけると何だかんだ答えてくれるんだけどね~」


ふーん……。

嵐くん、そうなんだ。

なんかあるんだろうなとは思ってたけど、そうか、家族ねえ。

というか、嵐くんにいっぱい話しかける来都くんと渋々答えてくれる嵐くん、すっごく想像できるなあ……。


「それ、私に勝手に話しちゃっていいの?」

「果音ちゃんにならね」


来都くんは珍しく語尾を伸ばさずに言い切った。

よっぽど真面目なのだろうか。雰囲気がさっきまでとは違う気がする。


「嵐くんだって、話したくなければ曖昧に誤魔化せばよかったんだよ」


でも嵐くんは『その話はしないでくれ』って言ってた、と。

来都くんは思い出すような素振りを見せながら話す。


「本当は誰かに聞いて欲しいんじゃないかなあ」

「……」

「多分だけど、2人なら嵐くんの話を聞いてあげられると思う」


そう言って、来都くんは私に優しく微笑んだ。

……なんだか、掴めないな。

今の来都くんは、私に本当に嵐くんの話を聞いて欲しいって願っているように見える。

会ったときはもっとこう、ヘラヘラしていて、隙がなくて。

あれ?そんな変わってない気もするな。

でもなんか、わからない。

来都くんは、いったい……。

いったい、何を知っていて、何が目的なんだ…?