彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 「え……」

 「嫉妬。たぶん」

 軽く言うのに、目は冗談じゃなくて。

 「昨日、一緒にいたからさ。余計に」

 廊下の空気が、ふっと静かになる。

 「……冗談、ですよね?
 先生、そういうのは……困ります」

 「冗談じゃないって言ったら?」

 「それは……」

 先生の目から徐々に視線を逸らし答えあぐねていると、先生のピッチが鳴った。

 気まずい空気を絶ってくれたその音に、気づかれないくらい小さく息を吐いた。

 白衣のポケットからピッチを取り出しながら先生が口を開いた。


 「俺、吉岡さんには、冗談言わないよ」


 仕事以外に初めて見る真剣な目に捉えられたかと思うと、それは一瞬で、耳にピッチをあてて「はい、瀬名です」という声とともに現実に戻された。

 いつもの顔に戻った先生は、私に軽く手を上げると、そのまま去って行った。