「大丈夫です」
本当に、そう思った。
あの日の私とは、もう違う。
「ここが、いいです」
そう言うと、先生は少しだけ安心したように笑った。
「じゃあ、行こうか」
繋いだ手が、きゅっと強くなる。
高い天井。
上品な照明。
静かなロビー。
あの日、泣きそうになりながら座っていたソファが目に入る。
本当に、世界が終わったみたいだった。
――でも。
あの日、そこに現れたのも、先生だった。
胸の奥が、じんわりと温かい。
傷ついた場所だったはずなのに。
今は、違う意味で胸がいっぱいになる。
案内されたレストランでの食事は、どこか夢みたいだった。
窓際の席から見える夜景。
ゆっくり運ばれてくる料理。
向かい側で、当たり前みたいに私を見つめる先生。
「そんなに見ないでください。恥ずかしいです」


