彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 隣で、しげぴーが呆れたように呟く。

 「絶対わざとだろ」

 「……違うよ」

 そう否定しながらも、顔の熱は引かない。

 しげぴーが小さく息を吐いて、肩をすくめる。

 「あいつ、ほんとめんどくせーな」

 そう言ってから、少しだけ表情を緩めた。

 「……でも、よかったな。うまくいったんだろ?わざわざ、俺を牽制しに来るくらいだからな」

 「そ、そういう訳じゃないと思うけど……」

 顔は熱くなり、声は尻すぼみになる。

 「あ、俺の特等席のこと言うの忘れたわ。次会ったら絶対言ってやる」

 そう言っていつも通りに振る舞うしげぴーに、心がじんわりあたたかくなった。

 「ちょっとひよりっ!」

 恵理ちゃんが少し離れたところから駆けつける。

 「なにか進展あったでしょ。今日仕事終わったら、話してくれるよね?」

 にこやかに圧をかけてくる。

 「うん。ちょっと時間くれる?」

 「もちろん!楽しみにしてる!あー、今日も定時で終わらせなきゃ」

 そう言って恵理ちゃんは元気に持ち場へ戻って行った。

 この何気ない日常が、今までより少しだけ特別に見える。

 そんな朝だった。