彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 そう思った瞬間、余計に顔が熱くなる。

 差し出された名札に手を伸ばし、受け取ろうとした、そのとき。

 指先が、わずかに触れた。

 ほんの一瞬なのに、そこだけ熱を持ったみたいに感じる。

 「はい、吉岡さん」

 低く落ちた声。

 視線が、ほんの少しだけ絡む。

 それだけで、昨日の朝の記憶が一気に蘇る。

 「……ありがとうございます」

 小さく頭を下げるのがやっとだった。

 「じゃ」

 それだけ言って、先生は踵を返す。

 いつもと変わらない、あっさりとした背中。

 その背中を見送る。

 「……なにあれ」