彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 翌日。

 いつもと同じはずの朝。

 ナースステーションのざわめきも、白い廊下も、何も変わっていないのに。

 今日は、少しだけ世界が違って見えた。

 「吉岡さん、これダブルチェックお願い」

 声をかけられて、はっと我に返る。

 「はいっ」

 カルテに目を落としながら、深呼吸をひとつ。

 ――仕事、仕事。

 そう言い聞かせるのに、ふとした瞬間に思い出してしまう。

 朝の光。近すぎる距離。腕の中の温もり。

 気を抜くと、顔がゆるみそうになるのを必死にこらえた。

 「なに、いいことあった?」

 横から覗き込んできたしげぴーに、びくっと肩が揺れる。

 「えっ、なんで……」

 「顔に出てる」

 さらっと言われて、言葉に詰まる。

 「……何もないよ」

 ごまかすように視線を逸らすと、

 「ふーん」

 意味ありげに笑われた。

 そのとき。

 「吉岡さん」

 低く、落ち着いた声。

 聞き慣れたその声に、反射的に顔を上げる。

 ――瀬名先生。

 一瞬で、心臓が跳ねた。

 どうしてここに。