「なんと、お美しいですね、夫人」
「お上手ですこと、会長様」
「いやいや、本当に美しい・・・妻と交換していただきたいぐらいだ」
「まぁ、旦那様、今なんて仰いましたの？」
煌びやかなパーティー会場でひときわ目を引く夫婦がいた。
「ごきげんよう、皐月夫人」
「ごきげんよう、狗巻(いぬまき)社長」
「この度はご結婚、おめでとうございます」
「えぇ・・・旦那様ともいい関係を築いていきたいと思っております」
皐月家夫人、皐月雫宮とその夫であり当主の皐月皇逢夫妻。
「噂通り、いえ、噂以上にお美しい。当主様・・・失礼、前当主様が気に入っているお方だとお聞きしておりましたので是非ともお目にかかりたいと思っていたのです」
「光栄です」
「えぇ、前当主様は皐月夫人のコトをとても優秀だと・・・」
「狗巻社長、彼女は私の大切な妻でね」
雫宮と男・・・傘下グループ社長の狗巻の会話に割り込む声。
「これはこれは、当主様。この度はご結婚おめでとうございます」
「ありがとう。だが、我が妻をとろうとするのは感心しないな」
「滅相もない。私にはキチンと私を愛してくれる妻と娘がいましてね」
当主・・・皇逢相手に、ニコニコと会話をする狗巻。
「そうだ、狗巻社長に報告がある」
「おや、なんでしょう。ご結婚おめでとうございます」
「そのコトではない。子を成すためだけの4人の女性をなくそうと思う。私は妻一人で構わないし、彼女の子はきっと他の誰と産む子よりも優秀だろう。それに、母が誰かも分からず、当主にもなれなかったものは生まれてきた意味がない」
皇逢は、そう言いながら自分の、2人の兄と2人の弟の顔を思い浮かべた。
「そうですか・・・いいと思いますよ。私は娘を妻にしてくれる男のもとへとへ嫁がせる気ですので」
「あぁ・・・今回は、来てくれて感謝する。では、私は挨拶回りがあるので」
「こちらこそ。夫人、当主様をよろしくお願いいたしますね」
「えぇ」
狗巻と分かれ、雫宮と皇逢は腕を組みながら会場で挨拶を始めた。