・・・雫宮は、鈴蘭のコトも気づいてたのかぁ。
もしかしたらキラキラの青春ものでも流すかなー・・・なんて思ってたんだけど。
「いい、ね」
鈴蘭は、自分のコトに重ねたりしたのかな。
「もしよかったら、探してほしい。『ふぃー』さんの楽曲、100曲以上あるから」
「100曲?ホントに?」
「うん、いろんなのジャンルが。恋愛ものは片思いから失恋ソング。青春のから私が好きな闇をベースにしたもの。あとキラキラした世界を表したり、一番評判がいいのは、『夢見がちな人に現実を見せる』もの。楽曲数も多くて、これだけで30曲はあると思う」
夢見がちな人に現実を見せる・・・?
ざ、残酷だなー・・・。
「このストーリーはお姫様が王子様と幸せになる。もし、これが現実だったら?現実には必ず裏がある。それを歌にしたもの」
『ふぃー』さん、もしかしてすごい現実的で厳しい人?
2次元好きな人に好意的になれない3次元主義の人?
「『ふぃー』さんか・・・いいね」
好きな性格かもしれない。
家の伝手でも使って会いたいな。
「雫宮ってさ・・・」
僕たちよりずっと前を歩いていた鈴蘭がふいにこっちを見る。
「がむしゃらに人を応援する曲、好き?」
「嫌い」
即答した雫宮を鈴蘭が納得したように見つめてからまた歩き出す。
いつも話題を出してくれる鈴蘭が最低限の話しかしない。
それは恐らく、さっきの倉庫で獣火に言われたことが影響している。
『無能』・・・と。
「鈴兄」
雫宮は何を感じたのか、鈴蘭を呼び止めて隣に立った。
「自分を人と比べる必要、ある?」
「・・・もちろん。皐月家に生まれたからには人と比べて優秀じゃないといけない」