慌てて僕も後を追い、倉庫を出る。
鉄の匂いが気持ち悪かったけど、外に出るとまだましだ。
「ねぇ雫宮。雫宮のグループのメンバーが下っ端でも最強ってホント?獣火の実力が下から数えたほうが早いのも」
「・・・聞いたんだ。ホント。獣火はまだまだ弱い。私の中で強いっていうのは、私が標準。私が手加減して、勝てた人が強い」
「なんてすごい標準」
思わず口が勝手に動く。
なんて集団だ。
恐ろしすぎる。
「雫宮はあのグループから離れる気はない?」
「私を、お兄ちゃん以外で初めて大事にしてくれたグループだから・・・離れる気はない」
「そう・・・」
できれば、離れてほしいのが本音。
あんな危険すぎる男たちに囲まれる雫宮が心配だし、義兄としても雫宮が好きな男としても止めたい。
・・・いや、雫宮より弱い僕たちが言えたコトじゃないか。
「雫宮」
前を歩いていた鈴蘭が首だけ振り返る。
「俺たちが、雫宮を想ってるのも、大事にしてるのも、信頼してるのも、分かっててほしい」
その通りだ。
「鬱陶しいとか、義兄のくせにとは思うコトはあるかもしれないし、そんな行動をするかもしれない。でも、全部・・・雫宮のコトを想ってだってわかっててほしい」
「・・・」
雫宮はなにも言わない。
余計なお世話だと一蹴するかもしれない。
考え方が重いって引かれるかもしれない。
義理のくせに兄貴面すんなって怒られるかもしれない。
「・・・私は、私が決めたコトしかしない。他人からどう思われてるとか、どうでもいい。私を見ててくれる人たちがいるなら、別に構わない。誰かに嫌われようと、私には関係ない。大切な人以外、私はどうなってもいいと思ってる」
そう言って垂れてきた髪を耳にかける雫宮。
俯きがちだった顔を上げ、そして日が沈みかける空を見た。
太陽をかじる山。
その空はオレンジともピンクとも言い難くて・・・。
ただ、きれいな紫みたいだと思った。
「大切な人が傷ついたらそれ以上の報復をする。大切な人が泣いたら、泣かせた奴を泣かせる。大切な人が殺されたら──犯人を殺して、私も一緒に死ぬ」
私って考え重いの、と呟く雫宮。
「それ以上のコトをしなきゃなにも許せない。自分にも、他人にも」
雫宮は、冷酷姫なんかじゃない。
考えが重いと自負してるから、人のために動けない。
信じてなくても、動くことはできるはず。
それでも動けなかったのは、決して自己中心的な考えだったからじゃなく。
「雫宮は、人を困らせないようにしてたんだね」
自分の感情で人を飲み込まないようにするため。
すると、雫宮は唐突にスマホを出して首を傾げた。
「好きな歌に、凄く共感できる歌詞があった。『信頼の渇望』っていう歌。気に入った歌詞は・・・あ、実際に聴いてみる?」
そう言ってスマホを操作する雫宮。
少しして、メロディーが流れ始めた。
『心にある闇
君にも見えてるのかい
信じたいけど、怖いんだ
裏切られる痛みを知ってるから
笑顔の裏に隠れた嘘
誰も信じられない夜
孤独が僕の友達
信じることはもうできない
だけど君が差し出す手
信じてみてもいいのかな
怖いけど 君に寄り添いたい
孤独から抜け出したい
星の光が僕たちを導く
君の声が風に乗って届く
切ない夜に、君を感じる
君の瞳に映る星空
僕の心を奪う
君と共に過ごした日々が
今でも胸に残る
闇を超えて君を信じる
僕たちの未来を描く
恐れずに手を取り合い
新しい明日へ』
鉄の匂いが気持ち悪かったけど、外に出るとまだましだ。
「ねぇ雫宮。雫宮のグループのメンバーが下っ端でも最強ってホント?獣火の実力が下から数えたほうが早いのも」
「・・・聞いたんだ。ホント。獣火はまだまだ弱い。私の中で強いっていうのは、私が標準。私が手加減して、勝てた人が強い」
「なんてすごい標準」
思わず口が勝手に動く。
なんて集団だ。
恐ろしすぎる。
「雫宮はあのグループから離れる気はない?」
「私を、お兄ちゃん以外で初めて大事にしてくれたグループだから・・・離れる気はない」
「そう・・・」
できれば、離れてほしいのが本音。
あんな危険すぎる男たちに囲まれる雫宮が心配だし、義兄としても雫宮が好きな男としても止めたい。
・・・いや、雫宮より弱い僕たちが言えたコトじゃないか。
「雫宮」
前を歩いていた鈴蘭が首だけ振り返る。
「俺たちが、雫宮を想ってるのも、大事にしてるのも、信頼してるのも、分かっててほしい」
その通りだ。
「鬱陶しいとか、義兄のくせにとは思うコトはあるかもしれないし、そんな行動をするかもしれない。でも、全部・・・雫宮のコトを想ってだってわかっててほしい」
「・・・」
雫宮はなにも言わない。
余計なお世話だと一蹴するかもしれない。
考え方が重いって引かれるかもしれない。
義理のくせに兄貴面すんなって怒られるかもしれない。
「・・・私は、私が決めたコトしかしない。他人からどう思われてるとか、どうでもいい。私を見ててくれる人たちがいるなら、別に構わない。誰かに嫌われようと、私には関係ない。大切な人以外、私はどうなってもいいと思ってる」
そう言って垂れてきた髪を耳にかける雫宮。
俯きがちだった顔を上げ、そして日が沈みかける空を見た。
太陽をかじる山。
その空はオレンジともピンクとも言い難くて・・・。
ただ、きれいな紫みたいだと思った。
「大切な人が傷ついたらそれ以上の報復をする。大切な人が泣いたら、泣かせた奴を泣かせる。大切な人が殺されたら──犯人を殺して、私も一緒に死ぬ」
私って考え重いの、と呟く雫宮。
「それ以上のコトをしなきゃなにも許せない。自分にも、他人にも」
雫宮は、冷酷姫なんかじゃない。
考えが重いと自負してるから、人のために動けない。
信じてなくても、動くことはできるはず。
それでも動けなかったのは、決して自己中心的な考えだったからじゃなく。
「雫宮は、人を困らせないようにしてたんだね」
自分の感情で人を飲み込まないようにするため。
すると、雫宮は唐突にスマホを出して首を傾げた。
「好きな歌に、凄く共感できる歌詞があった。『信頼の渇望』っていう歌。気に入った歌詞は・・・あ、実際に聴いてみる?」
そう言ってスマホを操作する雫宮。
少しして、メロディーが流れ始めた。
『心にある闇
君にも見えてるのかい
信じたいけど、怖いんだ
裏切られる痛みを知ってるから
笑顔の裏に隠れた嘘
誰も信じられない夜
孤独が僕の友達
信じることはもうできない
だけど君が差し出す手
信じてみてもいいのかな
怖いけど 君に寄り添いたい
孤独から抜け出したい
星の光が僕たちを導く
君の声が風に乗って届く
切ない夜に、君を感じる
君の瞳に映る星空
僕の心を奪う
君と共に過ごした日々が
今でも胸に残る
闇を超えて君を信じる
僕たちの未来を描く
恐れずに手を取り合い
新しい明日へ』



