〈side 葦零〉
獣火と呼ばれた男と観客席に座っている僕たち。
「・・・で、あんたらは姫とどんな関係です?」
「学校の先輩だよ」
鈴蘭はそう答える。
まぁ、間違いではないか。
「逆にキミは?」
「名前は獣火、あ、勿論偽名ですよ。姫と同じグループに所属?でいいんですかね。俺はそこの下っ端です」
下っ端。
だったら勝てるんじゃないのか。
鈴蘭も思ったのか、こっそり彼の後ろから手を伸ばしていた。
その手は首に近づく。
そして──。
「甘いですね」
パシリと、手首を掴まれて鈴蘭は目を見開く。
僕も驚きを隠せない。
「気配が分かりやすすぎる。どれだけの強さを持って姫の隣にいるかと思えば・・・下っ端にすら負けてるじゃないですか」
笑顔でそういって掴んだ鈴蘭の手首をひねり上げる獣火。
「・・・ったく、無意味なコトしないでくださいよ。無能なアンタらには無駄です」
無、を強調して獣火は言った後、下を見る。
この観客席は二階にある。
吹き抜けみたいになっていて、学校の体育館みたいな?
「あぁ、姫はなんとすばらしい・・・」
獣火は崇拝のこもった視線を下でたたかう雫宮にむける。
一方で僕は考えていた。
皐月兄弟は各分野で日本一を獲っている。
美術やダンス、武術など。
兄弟の中で一番強い鈴蘭。
兄弟の中でとどまらず、日本で一番強い高校生。
それを・・・ものともしない人間。
それが、この倉庫の中に・・・雫宮を含め彼女の周りに・・・うじゃうじゃといる。
族なんて、弱い奴だっている。
でも雫宮の族は例外?
下っ端が日本一に勝っている。
しかも、体格では鈴蘭に劣っているのに、だ。
雫宮の傍にいるんだから当たり前。
その当たり前の強さが・・・ありえない。
雫宮の仲間とみられる、倉庫にいる奴の人数は100人越え。
獣火よりも強い奴は、もしかしたらいない・・・?
「このグループでの実力は、俺は下から数えたほうが早い。一番強いのは姫ですが、総長も引けを取らないくらい強いですよ」
嘘ではないです、と言い切る獣火。
・・・信じられない。
きっと雫宮の仲間は、全員鈴蘭より強い。
大会に参加してないだけで日本一よりも強い奴はいると思う。
でも・・・雫宮の周りに、こんなにいるコトある・・・?
「すべては姫の為。姫に追いつけなくても、いざというときに守れるくらいの強さは持ち合わせないとこのグループには入れません。姫と戦って30秒以内に勝つか、30秒以上持つか・・・どちらかができれば合格です」
「俺、それ受けた・・・」
「負けたんですね」
そんな・・・やっぱり、日本一の鈴蘭でさえ合格できない試験に、このグループメンバーたちは合格している。
頭脳は必要ないはず。
まぁ、必要だとしても鈴蘭は頭がいい。
兄弟全員、だけど。
「俺はなんとか30秒以上もちました。中には手加減ありですが姫に勝った人もいますよ。手加減ありですがね」
それほどいうってコトはよほど手加減したんだろう。
っていうか、話から予想する雫宮の強さだと、本気の彼女に勝てる奴なんていないんじゃないのか。
「・・・あ、もうすぐ終わりそうですね」
獣火の言葉につられて下を見ると。
「・・・う、わ」
まさかの血祭り。
真ん中に立つ雫宮の周りの男たちも返り血だらけである。
「ネズミ狩り、完了!」
「イエス、姫!」
・・・宗教じゃないよね、これ。
「さて、怪我人は?」
「いないに決まっとるやろ、姫。ここでの下っ端は他の族だと幹部レベル以上や!」
「もしかしたら喰乃らへんでも総長になれてるかもしれませんね」
何気ない会話。
でも、それが恐ろしい。
自分が幹部以上になれる族があるかもしれない。
なのに、自分のポジションが下っ端の族にいる?
その答えは・・・雫宮だ。
雫宮がいるから、このグループにいる。
この族は・・・最強、最恐、最凶が集まる恐ろしい悪魔集団。
・・・いや、悪魔なんて可愛いものじゃない。
人を死に導く存在・・・死神だ。
そうだ、こいつらは死神で、その中の紅一点、雫宮を女神のように崇めているんだ。
「姫、このまま朝までアジトにいるか?今使ってるアジトにやけど」
「ん-・・・夜にだけ行く約束になってるから遠慮しとく。掃除は頼んでいい?」
「任せてください。証拠隠滅は得意です」
「じゃあ殺夜と涙悪の2人でこの集団を片付けて。喰乃、中心になってこの倉庫掃除して」
証拠隠滅。
人が全然立ち入らないところにあるとはいえ、悪臭はするはず。
まるで犯罪者集団みたいだ。
証拠を残さないようにしてから去る、腕のいい集団。
「・・・なにしてるの、帰るよ」
いつの間にか観客席に来ていた雫宮。
「あぁ、うん・・・」
鈴蘭は呆然としたまま、雫宮について行った。
獣火と呼ばれた男と観客席に座っている僕たち。
「・・・で、あんたらは姫とどんな関係です?」
「学校の先輩だよ」
鈴蘭はそう答える。
まぁ、間違いではないか。
「逆にキミは?」
「名前は獣火、あ、勿論偽名ですよ。姫と同じグループに所属?でいいんですかね。俺はそこの下っ端です」
下っ端。
だったら勝てるんじゃないのか。
鈴蘭も思ったのか、こっそり彼の後ろから手を伸ばしていた。
その手は首に近づく。
そして──。
「甘いですね」
パシリと、手首を掴まれて鈴蘭は目を見開く。
僕も驚きを隠せない。
「気配が分かりやすすぎる。どれだけの強さを持って姫の隣にいるかと思えば・・・下っ端にすら負けてるじゃないですか」
笑顔でそういって掴んだ鈴蘭の手首をひねり上げる獣火。
「・・・ったく、無意味なコトしないでくださいよ。無能なアンタらには無駄です」
無、を強調して獣火は言った後、下を見る。
この観客席は二階にある。
吹き抜けみたいになっていて、学校の体育館みたいな?
「あぁ、姫はなんとすばらしい・・・」
獣火は崇拝のこもった視線を下でたたかう雫宮にむける。
一方で僕は考えていた。
皐月兄弟は各分野で日本一を獲っている。
美術やダンス、武術など。
兄弟の中で一番強い鈴蘭。
兄弟の中でとどまらず、日本で一番強い高校生。
それを・・・ものともしない人間。
それが、この倉庫の中に・・・雫宮を含め彼女の周りに・・・うじゃうじゃといる。
族なんて、弱い奴だっている。
でも雫宮の族は例外?
下っ端が日本一に勝っている。
しかも、体格では鈴蘭に劣っているのに、だ。
雫宮の傍にいるんだから当たり前。
その当たり前の強さが・・・ありえない。
雫宮の仲間とみられる、倉庫にいる奴の人数は100人越え。
獣火よりも強い奴は、もしかしたらいない・・・?
「このグループでの実力は、俺は下から数えたほうが早い。一番強いのは姫ですが、総長も引けを取らないくらい強いですよ」
嘘ではないです、と言い切る獣火。
・・・信じられない。
きっと雫宮の仲間は、全員鈴蘭より強い。
大会に参加してないだけで日本一よりも強い奴はいると思う。
でも・・・雫宮の周りに、こんなにいるコトある・・・?
「すべては姫の為。姫に追いつけなくても、いざというときに守れるくらいの強さは持ち合わせないとこのグループには入れません。姫と戦って30秒以内に勝つか、30秒以上持つか・・・どちらかができれば合格です」
「俺、それ受けた・・・」
「負けたんですね」
そんな・・・やっぱり、日本一の鈴蘭でさえ合格できない試験に、このグループメンバーたちは合格している。
頭脳は必要ないはず。
まぁ、必要だとしても鈴蘭は頭がいい。
兄弟全員、だけど。
「俺はなんとか30秒以上もちました。中には手加減ありですが姫に勝った人もいますよ。手加減ありですがね」
それほどいうってコトはよほど手加減したんだろう。
っていうか、話から予想する雫宮の強さだと、本気の彼女に勝てる奴なんていないんじゃないのか。
「・・・あ、もうすぐ終わりそうですね」
獣火の言葉につられて下を見ると。
「・・・う、わ」
まさかの血祭り。
真ん中に立つ雫宮の周りの男たちも返り血だらけである。
「ネズミ狩り、完了!」
「イエス、姫!」
・・・宗教じゃないよね、これ。
「さて、怪我人は?」
「いないに決まっとるやろ、姫。ここでの下っ端は他の族だと幹部レベル以上や!」
「もしかしたら喰乃らへんでも総長になれてるかもしれませんね」
何気ない会話。
でも、それが恐ろしい。
自分が幹部以上になれる族があるかもしれない。
なのに、自分のポジションが下っ端の族にいる?
その答えは・・・雫宮だ。
雫宮がいるから、このグループにいる。
この族は・・・最強、最恐、最凶が集まる恐ろしい悪魔集団。
・・・いや、悪魔なんて可愛いものじゃない。
人を死に導く存在・・・死神だ。
そうだ、こいつらは死神で、その中の紅一点、雫宮を女神のように崇めているんだ。
「姫、このまま朝までアジトにいるか?今使ってるアジトにやけど」
「ん-・・・夜にだけ行く約束になってるから遠慮しとく。掃除は頼んでいい?」
「任せてください。証拠隠滅は得意です」
「じゃあ殺夜と涙悪の2人でこの集団を片付けて。喰乃、中心になってこの倉庫掃除して」
証拠隠滅。
人が全然立ち入らないところにあるとはいえ、悪臭はするはず。
まるで犯罪者集団みたいだ。
証拠を残さないようにしてから去る、腕のいい集団。
「・・・なにしてるの、帰るよ」
いつの間にか観客席に来ていた雫宮。
「あぁ、うん・・・」
鈴蘭は呆然としたまま、雫宮について行った。



