前を見て雫宮は玄関のドアを開ける。
「アジトなの?」
「殺夜のスマホの位置情報だと、昔使ってたアジト」
「GPS・・・?」
「ああいう電話があった時にすぐに駆け付けられるように」
信頼してるんだな、と醜い嫉妬が沸き上がる。
・・・おっと、今出すべき感情じゃないな。
スルリスルリと狭いところを猫のように移動する雫宮。
必死にそのあとを追うと。
「・・・ここ」
1つの古くて大きい倉庫を指差す雫宮は可愛いけど、背景が可愛くない。
ギィ、と音を立てて開いた扉と・・・。
色んなトコロに血が飛ぶ壁、床。
「姫!来んのの早いな!早速やけど・・・」
「はいはい」
雫宮は慣れたように1人の男に近づく。
「涙悪」
涙悪、と呼ばれたのはさっきまで無双していた男。
関西弁男ともう一人に敬語男だ。
「姫様っ・・・」
「戦わなくていいよ」
「ですが・・・っ。もし姫様が攫われたら・・・!」
男の気持ちも分かる。
俺もきっと暴れていただろう。
「涙悪が暴れてる間に私が攫われたら?」
「っ!・・・そうですね、俺が間違っていました」
ぎゅっと手を握る男。
きっとさらわれて好き勝手される雫宮を想像したんだろう。
ポタリ、と。
倉庫の床に紅い液体が落ちる。
「・・・涙悪」
名前を呼んでハンカチを渡す雫宮。
おそらくだけど詰めが食い込んで出ただろう血。
相当怒っているのだと分かる。
「喰乃」
「姫!」
雫宮が会話するのと同じくらいの声量で誰かの名前を呼ぶ。
それなのに50メートル以上向こうにいた男はピクリと反応し、駆け寄ってきた。
・・・超人?
「喰乃、獣火いる?」
「・・・なんで」
「獣火に頼みたいコトがあって。喰乃には一緒に戦ってほしいんだけど」
「わかった!獣火ー!姫が呼んでるー!」
喰乃という焦げ茶色の髪をした少年が走って行く。
そして一瞬で走ってきた黒髪の男。
「姫、お呼びですか?」
これはまた忠誠心が高そうな男だ。
「2人を観客席に。邪魔になるから」
「了解です」
雫宮、今日はよくしゃべるな。
いや、この仲間たちとはいつもそうなのか。
こうして俺たちは獣火の無言の圧に耐えられず、観客席に向かった。
〈side 鈴蘭 END〉
「アジトなの?」
「殺夜のスマホの位置情報だと、昔使ってたアジト」
「GPS・・・?」
「ああいう電話があった時にすぐに駆け付けられるように」
信頼してるんだな、と醜い嫉妬が沸き上がる。
・・・おっと、今出すべき感情じゃないな。
スルリスルリと狭いところを猫のように移動する雫宮。
必死にそのあとを追うと。
「・・・ここ」
1つの古くて大きい倉庫を指差す雫宮は可愛いけど、背景が可愛くない。
ギィ、と音を立てて開いた扉と・・・。
色んなトコロに血が飛ぶ壁、床。
「姫!来んのの早いな!早速やけど・・・」
「はいはい」
雫宮は慣れたように1人の男に近づく。
「涙悪」
涙悪、と呼ばれたのはさっきまで無双していた男。
関西弁男ともう一人に敬語男だ。
「姫様っ・・・」
「戦わなくていいよ」
「ですが・・・っ。もし姫様が攫われたら・・・!」
男の気持ちも分かる。
俺もきっと暴れていただろう。
「涙悪が暴れてる間に私が攫われたら?」
「っ!・・・そうですね、俺が間違っていました」
ぎゅっと手を握る男。
きっとさらわれて好き勝手される雫宮を想像したんだろう。
ポタリ、と。
倉庫の床に紅い液体が落ちる。
「・・・涙悪」
名前を呼んでハンカチを渡す雫宮。
おそらくだけど詰めが食い込んで出ただろう血。
相当怒っているのだと分かる。
「喰乃」
「姫!」
雫宮が会話するのと同じくらいの声量で誰かの名前を呼ぶ。
それなのに50メートル以上向こうにいた男はピクリと反応し、駆け寄ってきた。
・・・超人?
「喰乃、獣火いる?」
「・・・なんで」
「獣火に頼みたいコトがあって。喰乃には一緒に戦ってほしいんだけど」
「わかった!獣火ー!姫が呼んでるー!」
喰乃という焦げ茶色の髪をした少年が走って行く。
そして一瞬で走ってきた黒髪の男。
「姫、お呼びですか?」
これはまた忠誠心が高そうな男だ。
「2人を観客席に。邪魔になるから」
「了解です」
雫宮、今日はよくしゃべるな。
いや、この仲間たちとはいつもそうなのか。
こうして俺たちは獣火の無言の圧に耐えられず、観客席に向かった。
〈side 鈴蘭 END〉



