〈side 鈴蘭〉
「・・・すぅ」
腕の中で眠る雫宮を見下ろす。
「お兄ちゃん・・・」
その顔は安心しきっていて、男として意識されてないと嫌でも理解した。
「雫宮・・・」
どうしようか。
このままベッドに運ぶ?
それとも・・・食ってやろうか。
「・・・がおー」
耳元でささやく。
向こうのソファーには葦零が座っているから、そっと雫宮を抱えた。
ふんわりとした生地のドレスと装飾。
「お兄ちゃん、か・・・」
雫宮には本当の家族・・・兄がいたんだろうか。
どんな兄だ?
どうやって、雫宮に懐かれた?
兄みたいな男が・・・兄が、好きなのか。
雫宮は・・・雫宮の兄はなにをした?
どんな男だったんだろう。
どんな男が、雫宮はいいんだろう。
どんな男になったら・・・雫宮は選んでくれる?
それとも・・・雫宮は、恋人よりも兄を望んでいる。
俺は・・・義兄として必要とされるだけでは満足できない。
男として・・・恋人として必要とされるまで、雫宮を離せない。
かわいそうな雫宮・・・。
こんな執着強い男に気に入られるなんて・・・。
「・・・覚悟してね?」
もう、俺から離れるのが不可能だって、思い知らせてあげる。