「なんて艶のある御髪!ご自分でお手入れされているのですか?」
「・・・はい」
櫛で梳いてるだけだし、寝てないから髪質は悪いと思うんだけど・・・。
「こちらの髪飾りはどうでしょう?邪魔にならない程度の大きさですし、いいじゃないですか?」
「・・・はい」
さっきから返事ははい、しか言っていない。
メイドさんが出してきたのは水色のもの。
その髪飾りで髪を緩く纏められ、メイドさんは一気にやる気いっぱいに。
「さぁ、これからが私たちの見せ場です!」
そっか、メイドさんが主にするのはメイク。
逃げられそうにはないな・・・。
「こちらのアイシャドウはどうですか?」
「チークはこれくらいの濃さの・・・」
「アイラインはこの色が瞳の色に合うと思います!」
「まつげ長いですねぇ・・・」
最後のセリフはメイクに関係ないと思うんだけど・・・。
「お嬢様、できましたよ!」
メイドさんに優しく背中を押され、私は化粧室を出る。
「あ、雫宮可愛い~!」
すぐに私に気づいた零兄が席を立って寄ってきた。
「・・・なにをするの?」
「ん-?ちょっと言うとおりにしてほしくてぇ」
零兄は意味深に笑うと、私をソファに座らせた。
そして、隣に座った零兄に持ち上げられる。
「わ、軽・・・」
心配そうな目で見つめられ、身体測定の時の先生を思い出した。
膝に乗った私を抱きしめ、頬ずりをする。
「じゃあ始めようか」
零兄は、そう言って大人っぽくニヤリと笑った。