────かくして、断罪された蕭家の処刑は早々に執り行われる運びとなった。
かつてまとっていた威光や栄華は見る影もなく、悄然と刑場にいるのはただの罪人でしかない。
連行された容燕と航季は言葉を交わすこともなく、下手人のひと太刀でその首を斬り落とされた────。
その場には、王とともに紫苑も立ち会った。
彼は重たげな硬い表情で口を結ぶ。
父や弟、少しく前の妹の死に悲しみはない。それでも、かつては英雄と謳われ、この上ない名誉と誇りに満ちていた蕭家の散り際はあまりに儚く、いっそ憫然たるものであった。
「……紫苑」
王は気遣うように彼を見やる。
「実のところは蕭家の血を引いているとしても、そなたを罰することはないゆえ案ずるな。そなたは……春蘭のそばにいなくては」
早くに名を捨て、家を捨て、父を捨てた彼のことまで、血筋だけを重んじ連座で処罰の対象とするのは、誤りであると王は判断した。
長年、春蘭や鳳家に仕え、支えてきた彼の人となりは理解している。春蘭にとってどれほどの存在であるかということも。
「蕭榮瑶を罪に問うことも無論ない。あの者は柊州を治める能吏だ」
彼の優れた人格や品性もまた、王の知るところである。
蕭家は没落を免れないが、蕭姓を持つ者が、気高き蕭家が完全に絶えるわけではない。
悪気の削がれた栄光の時代の家門が、いずれ彼らの手で再興されていくこととなるであろう。
「……はい、陛下」
紫苑は摯実な様子で膝をつき、跪拝の姿勢をとった。
王が理解に富んだ英明な人才でよかった。ほかでもない彼が王でよかった。
「お心遣いに感謝申し上げます」
◇
とっぷりと日が落ちる。
長い長い戦いに幕が下りたその夜、煌凌は春蘭とともに桜花殿にいた。
寝台に並んで腰かけ、揺れる蝋燭の灯りを見つめる。
「とうとう打ち勝ったわね。もう、名実ともにあなたが王さまよ」
ついに諸悪の根源を断ちきるに至った。当初は机上の空論でしかなかった蕭家の征伐を果たした。
彼らの犠牲となった者たち、そして母の無念が少しでも晴れたらいい。忍耐を重ねてきた父の心が少しでも軽くなるといい。
春蘭は胸の内でそう願った。
「未だ実感が湧かぬが、誠に長年の大義を果たしたのだな。……戦う勇気をくれた、そなたのお陰だ」
彼は慈しむような微笑を向ける。
煌翔の言っていたように、いつしか自身のもとへ集った人才の力を借り、蕭家を征伐するという大望を果たすに至った。
────いつか、いつか、と辛酸をなめながら、連中の横暴や果てしない孤独にずっと忍耐を重ねてきた。
それは己の無力さをよく自覚していたからである。
容燕に支配され、実権を奪われ、稀代の暗君であると臣らに嗤われ続ける日々であった。
後ろ盾もなくただ玉座にしがみついていることしかできなかった煌凌は、振り返れば自ら何かをしようなどと思ったことがない。
連中を打ち倒さんと望みながら、そんな機会が訪れることを願うばかりであった。自身が矢面に立ち、剣をとる度胸もなく。



