白い軽自動車がゆっくりと駐車場から出ていく頃、
ヒールの高い靴を履いた女が
大きなため息を吐き捨て
不機嫌な顔で辺りを見回している。
冷たい風が女の背中まで伸びた
艶やかな髪を靡かせた。

ーーここまで来たっていうのに

女はヒールを地面に叩きつけ
コンコンと不機嫌な音を響かせ
ロータリーの側にある喫茶店のドアを開けた。

窓際の席にドスンと音を立てて座ると
ショルダーバックからスマホを取り出した。
八つ当たりかのにように
スマホの画面をカツカツと爪で弾く。

ーーどういうつもりよ

「いらっしゃい…」
「カフェオレ ホット」
喫茶店の女将の声を遮り、
女は吐き捨てる様に注文した。


ーーもう待つ番はおしまい。
ねぇ。そうよね?

女は手でゆっくりとお腹をさすった。
薄紅色に塗られた爪はキラキラと光り
女は目を細めかすかに笑った。

窓の外ではうす黒い雲が忍び寄っていた。