魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう




『おれ、魔女制度をなくしたい』



 ……!

 あの時の、リヒトくんの言葉だ。

 なんで⁉ なんでこれが録音されてるの⁉



「この音声が、こちらに情報提供されました。
魔女監視士としてもう、見過ごせません。
あなたを、連行させていただきます」



 火野さんは、リヒトくんにスマホをつきつけた。



「待った!」



 リヒトくんが、声を上げた。

 その表情には、なんのおびえも、とまどいもない。

 どうして……?

 そうだ、まさか、また何か仕掛けを⁉

 真っ暗だった心に、希望の光が差してくる。



「連行する前にさ、
たったさっきコンクールに応募した曲をきいてくれないか? 
自信作なんだ」



 あの曲を?



「……、いいでしょう。
あなたとカナさん、梨田さんがそのような活動をしているのは把握しています。
最後の情けです」



 リヒトくんはうなずき、スマホをとりだしてタップした。

 曲が流れはじめ……、って、え?

 違う。

 これ、わたしがつくった曲じゃない。

 リヒトくん、間違って流したの?

 そう思ってリヒトくんを見ても、平然としている。

 イントロが終わって、歌がはじまった。

 この声は、間違いなくリヒトくんだ。

 リヒトくんが、わたしの曲じゃない、別の歌を歌ってる。

 ……いったい、何がどうなってるの⁉

 静かな教室の中で音だけが鳴り響き、やがて曲が終わった。



「……? われわれが把握していたものと、違う?」