この関係には名前がない

◇

3月中旬。金曜深夜1時。

——ガチャ、ガチャ

——ガチャガチャガチャ

あれ……?

——ガチャ、ガチャ

——カチャリ

「何やってんですか」

「え……? 真下くん? なんで?」
「こっちは俺の部屋」
数か月ぶりにまたやってしまったらしい。

「あはは……やっちゃった。ごめんね……」
「大丈夫ですか?」
「うん、ひさびさに外で飲んではしゃぎすぎちゃった」
苦笑いでごまかす。

「本当にごめん。おやすみ」

真下くんの言う通りだ。
何やってるんだろう、私。

「……木崎さん、手ぶら?」
「え?」

真下くんの指摘で自分の手もとを見る。
「え!? なんで!?」
「その鍵も、なんか変じゃないですか?」

彼に言われて握りしめていたものをよく見ると、見覚えのない形の鍵にプレートが付いている。
足元は居酒屋のロゴ入りのサンダル。

またしても血の気が引いていく。

こういうときの酔いの醒める速さってなんなんだろう。

さっきまで飲んでた居酒屋にカバンごと忘れて、店の靴箱の鍵を握りしめて帰って来てしまったんだって理解して、一気に絶望的な気持ちになる。