この関係には名前がない



3月中旬。金曜深夜1時。

——ガチャ、ガチャ

——ガチャガチャガチャ

あれ……?

——ガチャ、ガチャ

——カチャリ

「何やってんですか」

「え……? 真下くん? なんで?」
「こっちは俺の部屋」
数か月ぶりにまたやってしまったらしい。

「あはは……やっちゃった。ごめんね……」
「大丈夫ですか?」
「うん、ひさびさに外で飲んではしゃぎすぎちゃった」
苦笑いでごまかす。

「本当にごめん。おやすみ」

真下くんの言う通りだ。
何やってるんだろう、私。

「……木崎さん、手ぶら?」
「え?」

真下くんの指摘で自分の手もとを見る。
「え!? なんで!?」
「その鍵も、なんか変じゃないですか?」

彼に言われて握りしめていたものをよく見ると、見覚えのない形の鍵にプレートが付いている。
足元は居酒屋のロゴ入りのサンダル。

またしても血の気が引いていく。

こういうときの酔いの醒める速さってなんなんだろう。

さっきまで飲んでた居酒屋にカバンごと忘れて、店の靴箱の鍵を握りしめて帰って来てしまったんだって理解して、一気に絶望的な気持ちになる。