夏に願いを

絶好のタイミングを逃してしまった気はした。
だけど叫んでいたら、叶居さんに告ってしまいたくなった気持ちはどこかに飛んで行って、かわりに悔しかったインタイハイを思いだした。もっと強くなって、いや、そうじゃなくて。僕はもっとバドと真剣に向き合って、叶居さんにがっかりされない男になって、そうしたらいつか、この気持ちを伝えよう。

叶居さんの転校で全てが消えてしまうはずだったのに、僕は今、叶居さんとこうして並んで海に向かって叫んでいる。まだだ、まだ終わっていないんだ。叶居さんに届くまで、終わりはしないんだ。

「スッキリしたね!」
「うん。なんかインタイハイ悔しかったの思い出したけど、頑張ろうって思えた」
「よかった。吹部も県止まりで私も悔しい。って、私は部員じゃないけどね。カナデくんはあと一年、絶対に頑張ってね!」
「うん」
「応援してるから!」

応援してるから。応援してるから。頭の中で叶居さんの声がリピートする。心臓がまた超高速で高鳴る。
やっぱり、言いたい。

「叶居さん、僕――」