楽しい、が騒いだり盛り上がる雰囲気を指すなら、線香花火はやっぱり少し地味だから、叶居さんが思うことも分かる。
だけど僕は静かに線香花火を見つめている時間は嫌いじゃなかった。話すことが得意ではないからかもしれないけれど、火花の形が万華鏡のように変わるのも好きだし、火球を最後まで落とさずにいられるかと集中するのも好きだった。
何より、火花が宇宙の構造や脳の神経細胞の写真と似ているところが好きだ。
「フラクタル」
「ん?」
「木の枝分かれ、雪の結晶、金平糖、それから、線香花火と宇宙」
「宇宙! むむ、なんだか大きな話になりそうだぞ」
「あ、ごめん、変な話しちゃって」
ポトリ、と、火球が落ちてあっという間に黒くなった。
「宇宙、落ちちゃったね」
「ただの火球だよ」
「カナデくんの宇宙話に合わせて言ってみたのに」
「あっ、ごめん」
謝った僕に叶居さんがなぜかツボに入った様子で、ひとしきり笑ったあと姿勢を正した。立ち上がった叶居さんが少し赤みがかってきた西日に照らされ、長い黒髪がオレンジ色になびいて花火みたいだ。
だけど僕は静かに線香花火を見つめている時間は嫌いじゃなかった。話すことが得意ではないからかもしれないけれど、火花の形が万華鏡のように変わるのも好きだし、火球を最後まで落とさずにいられるかと集中するのも好きだった。
何より、火花が宇宙の構造や脳の神経細胞の写真と似ているところが好きだ。
「フラクタル」
「ん?」
「木の枝分かれ、雪の結晶、金平糖、それから、線香花火と宇宙」
「宇宙! むむ、なんだか大きな話になりそうだぞ」
「あ、ごめん、変な話しちゃって」
ポトリ、と、火球が落ちてあっという間に黒くなった。
「宇宙、落ちちゃったね」
「ただの火球だよ」
「カナデくんの宇宙話に合わせて言ってみたのに」
「あっ、ごめん」
謝った僕に叶居さんがなぜかツボに入った様子で、ひとしきり笑ったあと姿勢を正した。立ち上がった叶居さんが少し赤みがかってきた西日に照らされ、長い黒髪がオレンジ色になびいて花火みたいだ。



