女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




迎えに来てくれると約束した時間に我が家──平々凡々な住宅地にある二階建て一軒家──の前に停まっていた、この黒塗りの高級車。

お父さんもお母さんもポカーンとしてたな。明日からご近所さんの噂になってたらごめんよ本当に。


そうやって緊張しまくっている私の気持ちを知ってか知らずか、先輩はいつもと変わらぬ調子で話しかけてくる。




「何か音楽でもかけよう。トルコ行進曲でもラジオ体操第一でも好きな曲を言ってくれ」


「チョイス独特すぎるでしょ」


「なら星彩学園第一校歌にするか」


「何が悲しくて夏休みに校歌聞かなきゃならないんですか。……え、てか第一校歌ってことは第二校歌もあるんですか?」


「ある」


「おお、衝撃の事実」




まだまだ知らないことだらけだ。奥が深いな我が学び舎。


……結局聞きたい曲が特に思いつかず何でもいいと言うと、運転手さんの趣味でなんか良い感じのヒーリングミュージック的なのが流れてきた。