女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「じゃ、そろそろ切りますね。邪魔しちゃってすみませんでした」




間違えて電話を掛けてしまったことへの謝罪さえ済ませたらすぐ通話を終えるつもりだったのに、いつの間にか話こんでしまっていた。

先輩の貴重な休憩時間をこれ以上消費させるわけにはいかないと思い、会話を切り上げようとする。


が──




『あ、待ってくれ』




慌てた加賀見先輩の声に引き留められる。




『その……花火の日、家まで迎えに行ってもいいか?』


「へ? うちまでですか? 何で……」


『少しでも早く会いたいから』




ぐ、と喉の奥で変な音が鳴った。

頭の中が真っ白。

いったいこの人はどういう気持ちでこんなことを言っているのだろう。


私はぎゅっと唇を結んで、自分の中で納得できる答えを探す。




「わかりました。先に私で慣らしておきたいんですね。任せてください」




結果たどり着いた答えはこれだ。