女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




『……今日見せてもらっている部署が女性社員ばかりなんだ。仕事の邪魔にならないようにと理由を付けて、距離を取りながら見てはいるんだが……さすがにこれだけ女性ばかりだと、離れていても冷や汗がすごくて』




……そりゃ大問題だ。

膨れ上がった尊敬の念が、一気に憐れみへと変わる。


大丈夫かな。視察中に倒れなきゃいいけど。




『あの女性社員のうち半数ぐらいが川咲だったら平気だと思うんだがな……』


「どういう状況ですかそれ。何人も私がいたら逆に気持ち悪いでしょうが」


『ふふ……そうだな……はははは、あちこちからツッコミの声が聞こえてきそうだ』


「先輩の中で私はそんなツッコミキャラなんですか?」


『ふっ……ははは』


「いつまで笑ってるんです」


『ありがとう、おかげで元気が出た』


「勝手に想像して勝手に元気出ただけでは??」




私がツッコミキャラというより、先輩が天然ボケなせいでそう見えているだけなのではなかろうか。