女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





弟が友達と花火大会に行くと聞いて、本当はうらやましかった。

私もこの学校に入って新しくできた友達を誘えたらな……なんて考えた瞬間もあったけど、結局実行できずにいたのだ。




「そそ、そうか。じゃ、じゃあ決まりだな」




加賀見先輩はたじろいだ様子で一歩後ろに下がる。

そのまま目を逸らし、何やら助けを求めるかのように天ヶ瀬先輩の方を向く。


やばい、前のめりになりすぎてちょっと引かれてる。反省。



何はともあれ、私は新しくできた夏休みの予定に胸が高鳴っていた。


ちなみに。

その後同級生たちの間で、「完璧で近寄りがたい加賀見先輩と王子様みたいな天ヶ瀬先輩。あの二人と普通に話せるなんて、あの特待生いったい何者?」と一目置かれることになると、このときの私はまだ知らない。