女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




それらを意識すると、引っ込んだはずの涙がまた眉間のあたりにじわじわと溜まってくるような感覚がしてくる。




「最初は手を繋ぐのだって数分が限界だったくせに」


「もう昔の話だ。……瀬那以外が相手だったら今もそうだが」


「でも、女性恐怖症はだいぶマシになったんですよね?」


「まあ、ずいぶんとな」


「だからって向こうで浮気したらダメですよ」


「するわけがない」


「どうですかね。私と同じように恐怖を感じない女子に出会ったら、また思わず『俺の恋人になってもらいたい』とか言っちゃいません?」


「……あのときのことはもう忘れて欲しい」




始めて出会ったあの日言われた言葉を使って茶化せば、先輩は弱々しい声で呟く。


……もちろん忘れてあげるつもりはないけれど。

先輩との思い出は、英単語の暗記に使う脳内容量を犠牲にしてでも覚えておいてやる。




「最近、ようやく気付いたことがあるんだ」