女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





みるみるうちに頬が熱くなっていくのを感じながらそっと目を開く。

目の前で先輩は顔を真っ赤にさせながら、静かに天を仰いでいた。そしてそのまま微動だにしない。




「あの……大丈夫ですか?」


「心配するな。幸せを噛み締めているだけだ」


「そ、そうですか」




ならばうん、問題はなかろう。

何だろう。先輩の反応を見ていると一周回って落ち着けるな。大変助かる。


余裕が戻った私は、ふっと笑って、今度は両手を広げてみた。




「幸せついでに抱きしめてもいいですよ」


「え」


「ほらほら」




私の行動に、先輩は一瞬驚いた顔をする。

けれど、今度は行動に迷いがなかった。

両手を私の背中へ回し、そのまま自分の方へぎゅっと引き寄せる。


じわじわと伝わってくる先輩の体温。

もうどちらのものなのかわからない激しい鼓動。

香水を付けるタイプではないから、爽やかなせっけんのような香りは恐らく柔軟剤なのだろう。