女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




恋愛に不慣れな私たちには、無理なく心地よいペースなのだろう。

それでも、物足りないと感じてしまう瞬間はある。




「瀬那」




私の目をじっと見つめる瞳がいくらか熱を帯びている。

律弥先輩は緊張混じりに短く息を吸って、言った。




「……キスしても、いいか?」


「あっ、聞くんですか?」


「いやだって、許可なしでして嫌がられたら立ち直れないだろ」


「いいですよ。てか無断でされたって律弥先輩が相手なら嫌がりませんって」




恥ずかしさに思わず笑みを浮かべれば、私の頬に触れる手に力がこもるのがわかった。

……いいですよとは言ったものの、される側はどうするのが正解なのだろうか。

わからないのでとりあえずきゅっと目を瞑ってみる。


視界を閉ざした、少しだけ後。

柔らかな感触がほんの一瞬、唇に触れた。




「っ……」




それは本当に一瞬。たった一回の出来事だった。

なのに私の心臓は、あり得ないぐらいにバクバクと激しく暴れまわっていて。